注意の刃物

なんだその言い方

僕はコンビニで働いている。

50歳後半くらいのおばさんがいるのだけど、この人の「言い方」が

気になる。

この人は「〜〜〜なので。」で会話のピリオドを打つ、珍しい人だ。

例えば、人に注意するとき

「これは違うので、〇〇してください。」ではなく

「これは違うので。」という。

「〇〇してください」という省略された部分を理解するには、

こちら側の寄り添いが必要になってくる。

多分おばさん的には、注意することに気まずさを感じている。

「〇〇してください」という1番「注意」が強いとこをフワっとさせたいのだと思う。

気持ちは分かるが、どうせなら最後まで注意されたい。

 

注意までの「導入」「起承転」までやってくれるのだが、

「結末」と「結」はこちら側で導くことになる。

これは他人に注意されるより言われるより、遥かにしんどい。

注意という名の刃物を僕に向け、「ここに刃があるので。。。。」

と言われる。あとは向けられた刃物に自ら進んで、刺されに行かなければならない。

他人に刺されるより、ずっと痛い。

 

その言い方腹たつので。。。

今日はそんなおばさんの口癖が炸裂した日であった。

「落合君。プチレーズンパンと豆パンは違うので。。。。」

と言われた。僕は何のことか分からなかったが、ひとまずおばさんに

向けられた刃物に飛び込み、血だらけになりながら、すぐに「すみません」と言った。

恐らく、

パンを並べていた時、僕は間違って「プチレーズンパン」を「豆パン」の列においてしまったのだ。

ひとまず謝ったしいいや、と思っていたのだが

 

時間が経過するにつれ、自分の中の小さな「え?」が沸きまくってきた。

そもそも「プチレーズンパンを豆パンの列に並べていたよ」と言えば済む話なんじゃないか?

てか、「プチレーズンパン」と、「豆パン」が違うことくらい俺は知ってるよ。

「プチレーズンパンと豆パンは違うので」という刃物は、パンの違いが分からない人に向けるものではないの。

例えば犬を陳列する仕事があって、

今回の僕のミスは、トイプードルを陳列するところに柴犬を並べてしまっただけ。

でもおばさんは

「猫と犬は違うので。。。。。」

と言ってきた。

 

飛び込む方も上手くなる

「プチレーズンパンと豆パンは違うので。。。」と言われた時に

もし仮に、「お前を殺して俺も死ぬ」みたいな気持ちで

「それは知っているので。。。」

と僕も刃物を向けたらどうなるのだろう。

お互いに刃物を向けたまま、長い緊張状態が続くのかしら。

そう思うとだるいから、僕は今後もガンガン向けられた刃に飛び込んでいく。

 

でも勘違いしないでほしい。いつだって一方的ではない。

あっちが、刃物を向け相手に自傷行為を誘導するプロなら

こっちは、向けられた刃に飛び込むプロ。スタントマンだ。

 

先日おばさんに「落合くん!」と呼ばれた。

何を注意されるのか分かっていた。

その瞬間「〇〇のことですよね?すみません、今度からは〇〇を△△

するようにします!!」と言った。

つまりは、おばさんが注意の刃物をこちらに向ける前に

僕は自らの懐から刃物を取り出し、それを地面に突き立て、

目の前でダイナミックに血しぶきを上げながら飛び込んでやったのだ。

 

飛び込む方も上手くなるので。。。