苦手な父方のおばあちゃん

幼な心に、父方の祖母に対して

「かみあわないな〜〜」と「馬が合わないな〜」「息が合わないな〜」とか思っていた。

祖父母の飼っていた、黄ばんだ白い犬とも、噛み合わなかった。一方的に噛まれた。

そもそも祖父母の住んでいた家がとても嫌な感じで、寝ているとき女の笑い声が聞こえたり、誰か通ったりした。

なんでも聞くところによると、部屋のど真ん中が霊の通り道「霊道」なのだとか。

居間が、霊のスクランブル交差点みたいな感じらしい。

お座りした黄ばんだ白い犬の前で、記念撮影をしていた霊もいたとか、いないとか。

 

そんな霊力みなぎる家に、ずっと住んでいる祖母はそりゃもう恐ろしかった。

祖母のエピソードの中でも、1番戦慄した話がある。

 

それは俺が幼い時の頃の話だ。父親に連れられて、祖父母の家に泊まりに行った。

あまり気が進まなかったのだが、「こうゆうことも必要だ」となんとなく分かっていたので、仕方がなかった。

夕飯の時間になると、祖母が俺に問いかけた。

「ご飯何がいい?」

「なんでもいい」僕はそう答えた。

「好きなもの作ってあげるから。遠慮なく言いなさい。」

基本的におじいちゃんや、おばあちゃんは、遠慮ない孫が好きなので、

ここは遠慮なく、「オムライス!!」と答えた。

「はいよ〜〜〜!」なんて言って、台所に消えていった。

俺は母がよく作ってくれる、オムライスが大好きだった。甘い卵に、しょっぱいケチャップ、具材はウインナー。めちゃくちゃシンプルだけど、それが分かりやすい味で、とても良かった。

「お待たせお待たせ〜〜〜」なんて祖母が上機嫌で、テーブルの上に置いたものは

「食べられる冗談」みたいだった。

白米を卵で包んだだけの食べ物だった。俺が戦慄恐々としているのを横目に

「早く食え〜〜〜」って顔で祖母がこちらを見ている。

味はあまりにも分かりやすかった。分かりやすすぎた。塩がふられているだけの白米を、無味の卵が乱雑に抱いているだけの味だった。彼女は、「オムライス」の「オム」をおざなりにしすぎた。これは「ライス」だ。「ホボライス」なんだよ。

 

「おばあちゃん、ケチャップ。ある?」

「ちょうど切らしてるのよ〜〜〜」

 

苦手だわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜