現実的な犬

今日平野勝之監督の「監督失格」を見た。とても良かった。

少しでも興味がある人は、オススメです。

Netflixにあるのでぜひ〜。

Kantoku Shikkaku | Netflix

この作品の感想等は別で書くとして、今回は「すごい分かるわ〜」と、感じた、あるシーンについて書こうと思う。

 

※「監督失格」のネタバレあり。

 

 

そのシーンは作中の中でも、もっとも印象に残る場面でもある。

母親が連絡の取れない娘の部屋に訪れたら、娘が死んでいたのだ(ノンフィクション)

救急車が来るまで、母親は地面に崩れ落ち「どうして!!!なんで死んだのよ!!」

といった感じで、泣き叫ぶのだが、もう犬が凄い。犬が気になる。母親が泣き叫べば叫ぶ程、ぴょんぴょんワンワン跳ねて跳ねて、戯れる。

その犬のはしゃぎようを見た瞬間に、娘の「死亡推定時刻」が大分前だったと

俺は判断できた。

実際、連絡が取れなかった2日間、娘さんは早い段階で、亡くなっていたらしい。

2日間誰にも相手にされなかった犬はもう凄い。飼い主の生死どころじゃない。

 

1番見ていて、刺さったのが

母親が阿鼻叫喚している中、ペロペロペロ顔を舐めようとする犬。

「なんで死んだのよ!!死んだら何もかも終わりじゃない!!」と地面に伏せ叫びながらも、顔を舐めようとしてくる、犬を手で優しく追い払った時に見える

母親の「冷静さ」とか「理性」がものすごくリアル。絶対ノンフィクションじゃなきゃありえないシーンだ。

 

ここからは体験談だが

私の父は私が幼い頃に死んでいる。突然だった。

父が死んだ場所が、父の実家だったので(このおばあちゃんがいる家)

ochiainowife.hatenablog.com

 

父が死んだと分かった、次の日かなんかに父方の祖母の家に言った。

僕は泣き崩れた。泣き崩れて「えーんえーん」と言っている時に

祖母が飼っていた犬が、僕の顔をペロペロペロしてくるのだ。

その時にどう感じるか2パターンあって

①「お前(犬)も悲しいよな。慰めてくれてるんだな」

②「うわペロペロしてきた」

である。

①を自然に選択できると、結構泣けるのだが、問題は②

僕はこの時②を感じてしまった。

その②を感じで、犬を少し追い払うまでに

「パパがいなくなっちゃった」➡︎犬が戯れてくる➡︎「うわペロペロしてきた」

➡︎「パパがいな、うわなんか汚いな〜〜」➡︎「一回犬避けるか」

になる。

要するに凄い「本能的」に泣いているのに、「んっだよ!犬!!」ってなった瞬間に自分に対しての俯瞰みたいなものが生まれてくるから、凄い「冷静」になってしまう。

 

「一回犬避けて、再び泣きに入る、それ即ち犬避けてから俺は泣きたい」

ってすでに予定調和みたいなものが生まれている。

「もう泣けねえじゃん!!!!!!!」ってなる。

 

犬は状況を理解することがあっても、空気は読まない。そして何よりも自分に正直だ。

「ロマンチック」「ステキな雰囲気」「悲しいムード」御構いなし、

一気に現実に引き戻す。この世界の番犬。

だから救われることもあるけど。