去年の冬に舞い降りた奇跡。
最近よく思いだすことがある。ちょうど、去年のこのくらいの時期のことだ。
仕事を辞めていて5ヶ月が経過していた。無職の全能感も薄れつつある中、
無職を維持するために、テレビも、PS4もレンジも失って(今もまだ取り返せない)
絶望にくれていた。
当時の飯の写真を見て頂ければ、言葉はいらないだろう。
家にあった1番高価なものは、僕が仕事を辞めたことを知らない母親が、
送ってくれた1万円のリュックである。
僕はこれを愛用していて、とても気に入っていた。
コトの始まりは、ラジオのお手伝いの帰り道に起きた。
酔っ払いが僕の横を駆け抜けたと思ったら、その瞬間リュックが裂けたのである。
上司一人と、新卒4人の酔っ払い集団で、そのうちの新卒が僕のリュックを引き裂いたのである。
当時新卒に同情していた僕は、酔いが完全にさめた顔で謝りにきた上司を
許してしまった。明らかに良いの飲み会だった雰囲気を壊さない「オレ」に僕もまた酔っ払っていたのだ。
上司を快く許したものの、僕も財布に1000円もなかったもので、この場で金が欲しと思い、許したもののその場を立ち去らないスタンスをとった。
あと腐れを残さない代わりに、上司の財布から引っ張ろうと思った。
空気を読んだ上司は「2000円」を手渡し、「これでリュック買えるよな!!」
と上機嫌にどこかへ消えていった。
2000円をもらえた事が嬉しくて仕方なかったが、冷静になった帰り道、
粋ぶったり、金を取ろうとした、俺や、調子にノッテいた上司に腹がたった。
この事件の詳しい話はこちらに記してある。
その夜、僕は不思議な夢を見た。
「りょう、パチンコに行きなさい。あなたは、パチンコに行きなさい。」
そう告げられる夢をみたのだ。
DNA的に、パチンコに絶対行ってはいけないので、普段はあまり行かないのだが、
この時ばかりは、行くしかないと何故か思った。
夕方18時。経堂のパチンコ屋に2000円を握りしめて向かった。
もちろん、1パチ。99分の1の海物語に挑んだ。
「本日は快晴なり。視界良好!!」とパチンコ台の舵をきったが、あっけなく1000円が散った。
まあそりゃそうか、残りの1000円で松屋の定食2回食った方がいいかな、
とか考えていると、隣の席のおばあさんがいきなり話しかけてきた。
「その隣に行きなさい。」
この一言だった。
パチ神様だとすぐに分かった。
本能でこいつは、老婆の皮膚を被ったパチ神だと確信した。
隣の席に移ると、すぐに当たった。でも現実はそう甘くなく、すぐにまた玉は無くなった。と思ったら、おばあさんが、玉をたくさん入れてくれた。
なくなりそうになる度に、玉を入れてくれた。当たる度に、一つ飛ばしの席で拍手をしてくれた。
結果は、おばあさんの力もあり、プラス1000円になった。
欲をかいてはいけないし、何よりもおばあさんの協力を、負けで終わらしたくなかったので、終わりにすることにした。
ああ良かった。
と思って席をたとうとすると、店員がきた。どうやらなんかのキャンペーンをやっているらしく、クジを引けとのこと。
僕は1等を引いた。おばあさんが握手しにきてくれた。涙が出そうになった。
空気清浄機をもらって、店から出る時、おばあさんは店員と話していた。
店員「珍しいですね。パチ神様があんな若者に肩入れするなんて」
パチ神「気まぐれじゃよ。」
なんて会話をしていたんだろう。
ありがとう。
空気清浄機は知り合いに1万で売った。1万のリュックを1万に変えた。
ジュースが二本、勝ちの1000円、空気清浄機。
嬉しくて、店の前で一人で撮影した。
この思い出で終わりたくて、それ以降パチンコには行ってない。