安らかに眠ってくれ!!!

バイト先。3日前。

ヨーグルトや飲み物を運んでくる業者のおっちゃんが中々こなかった。

朝の8時に来るようにお願いしているのだが、8時30分に店の電話が鳴り

「遅れます。急ぎま〜す。」と言われ9時に来るなんてことは日常茶飯事。

ウチの社員にこっぴどく怒られてるのを何度も見た。

遅刻してきて僕の顔を見かけては「今日は社員いるの??」とコッソリ聞いてきて、

「いないよ〜」と言うと嬉しそうな顔をしている。

飲み物を納品した後、ウチの店でよくお茶を買い、「はい100万円」などと抜かし非常に鬱陶しいのだが、何故か憎めない人だ。

僕がバイト先に入った時、本当にお金がなくて全ての公共料金を滞納していた。

そんな話をおっちゃんにすると、おっちゃんは「5000円貸そうか?」と言ってくれた。借りなかったが、とても嬉しかった。

それからは毎回会う度に、おっちゃんとはお互いの家族の話や、僕の将来の話、パチンコや、お金の話をした。

宝くじを買ったらしく、1億当たったら数百万はくれると約束してくれた。

朝っぱらからしょうもない話をすると、とても安心した。

 

社員さんが僕を呼んだ時「やめて」と思った。これから告げられる事を僕が嫌でも悟ってしまうような表情をしていたからだ。何回か見た事がある。

他のスタッフに告げると、僕が1番仲が良かった事に気をつかうように

「ああ。そうなんだ。」と言った。

これくらい悲しめば妥当かなといったような、理性的なものを感じて腹が立った。

でも僕もずっとは落ち込まなかった。落ち込まない事が出来たと言った方がいいのかもしれない。

自分の父親が死んだ時、家に集まった父親の友人達が「今頃、あの世でバイクで走ってるよ」などと明るく振舞っているのを見た時、「死にたくて死んだんじゃないのに」と思った。

僕もついついおっちゃんとの思い出を素敵な感じで書いてしまいそうになる。

理由はそうしないといられないから。

 

父親が死んで1週間が経過した後、3年生の僕は学校で楽しい事があっても笑っていいのか分からなかった。母親は笑っていいと教えてくれた。

帰り道、どれくらい悲しめばいいのかよく分からなくなった。

悲しまないようにすれば悲しまないようにする事も出来た。家に帰ってテレビを見て笑ったし、次の日には考えていない時間もあった。

 

もうバイト先でもその事について誰も喋らなくなったし、僕もいつまでも悲しむ事をやめた。いつまでも考えてられっかよと、おっちゃんに腹が立ってきた。

でも最後に会った日、遅刻してきたおっちゃんに素っ気ない態度をとってしまったかどうかが、僕はとても気になる。

 

今日バイト先の1人のおばちゃんが、

僕に「おっちゃんの事を忘れられない。お通夜に行きたい」と言ってくれた。

何だかとても嬉しかった。

くそ〜〜〜〜〜〜