綾野剛

綾野剛に似てない?】

バイト先で女の子にそう言われた。

「似てないよ〜。」と言った。

内心嬉しかった。自分が綾野剛に似ているかどうか考えたことがなかったし、皆もそうだと思う。だが、俺は「綾野剛に似ている」という嫌疑をかけられたことにより、

俺は「綾野剛に似ているかどうか」を考える権利を得たのだ。

 

で、考えた末

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似てます。

 

個人的な見解ではあるが、似てました。

僕の主観とその女の子の客観で紡ぎだした答えは「似てます」なのだ。

 

が、2人の意見だと心許ないというのも本音なので、友人に聞くと

声を揃えて「似てない」という。

 

声を揃えてと言っても、友人2人にしか聞いていない。

だから今は、「似てる派(俺&女の子)」2票「似てない派(友人2人)」2票とイーブンな状況なのだ。ここまでにしといてやろうと言った感じで、これ以上は人に聞かないことにした。

大きな収穫として、認めたくはないものだが、僕を綾野剛に「似てない」と思う人がいるという事が分かった。

 

ここからが本題だ。

その女の子は兎にも角にも僕を「綾野剛似」だと思ってくれているらしい。

綾野剛に似ている」➡︎「身近な知人だと1番綾野剛かな」➡︎「私にとっての綾野剛だ」➡︎「俺は君にとっての綾野剛だよ」➡︎「どうも。綾野剛です!!」

となる。

彼女は会うたびに「綾野剛〜〜!」と言ってくれる。

俺も「ちっす。俺、綾野剛っす。」顔で「またまた〜」とか言って、俺が綾野剛になれる時間を楽しんでいた。

 

それが3回、4回、会うたびに「綾野剛だ〜」と言われ

5回目くらいの「あ!!綾野剛だ〜〜!!」の時

「俺、馬鹿にされてんじゃね?」とシンプルに思った。

よくよく冷静になってみると、彼女の同僚の女の子がなんかニヤニヤしてる。

 

俺はもしかしたら「綾野剛」ではないのかもしれない。とその時思った。

俺は綾野剛になりたかった。でも、俺は彼女なしでは綾野剛にはなれない。

彼女の中の俺が綾野剛であるからだ。

彼女に綾野剛になれる時間を奪われた俺は、とても苛立った。

 

その後も会うたびに「あ、綾野剛〜〜」と言われたが、綾野剛としての自信を失っている俺コト綾野剛は、綾野剛にはなりきれなかった。

今までは「綾野剛だ〜〜」と言われると「キリッッッ」とした顔をしていたのだが、もうどうゆう顔をしていいのか分からなくなった。

 

綾野剛になれない生活はひどく苦しかった。

もうこんな綾野剛じゃない生活は嫌だ!!!!!!!

僕は、怖かったけど、僕は彼女に、俺が「綾野剛」か「否」か。

「YES綾野剛」なのか「NOT綾野剛」なのかを聞いてみることにした。

だが、普通に聞いても彼女の真意は掴めない。

きっと「綾野剛だよ〜」と言ってくるだろうし、てか現に「俺って本当に綾野剛に似ている?(笑)(笑)」みたいな感じで聞いたら、「うん似ているよ!」と万遍の笑みなのか、万遍に皮肉を込めたニヤニヤだったのかは、分からないがそう言われたからだ。

 

僕は次「綾野剛だ〜」と言われた時のために弾を込めた。

この弾は彼女の本音を抉り出すものだ。

 

外はピーカン。未の刻。彼女は僕が働いているコンビニに、必ずちょっと遅めのお昼ご飯を買いに来る。予想通りの展開。そして僕を見つけた彼女はこう言うのだろう

 

「あ!!綾野剛だ〜〜。」

ホラきた。

状況は整った。

「またまた〜〜。ってか俺本当に似てる?(笑)(笑)」

(似てないよと言って僕をめちゃくちゃにして欲しい。お前に綾野剛ではないと、俺に叩き込んで欲しい。内心、僕も、彼女の本音を抉り出すために込めた弾を放ちたくはなかった)

 

「似てるよ〜〜!」

 

お膳立ては整ってしまった。

 

後は、僕が勇気を持って引き金を引くだけだ。

僕は彼女に弾を放った。

 

「じゃイケるんだよね?」

 

「え???」

彼女は唖然としていた。

 

僕は撃つてをとめなかった。全て自分に跳ね返ってくるとも知らずに。

「いやだから、本当に俺が綾野剛に似てるんだったら、〇〇ちゃんのこと俺、もうイケたって事でいいよね?実際にはイカないけど、もうイケたって事にしていいんだよね?」

 

「あはははは!!!!じゃね〜〜!!」

って言われた。俺を綾野剛だと思っているのなら、「うん。私イケるよ。超イケる。だって君、、、綾野剛じゃんか。」って言われたはずだ。

でも「軽く流された」ってことは俺は綾野剛じゃないって事なのか。

その時初めて「綾野剛」って何だろうって思った。

俺、そもそも綾野剛じゃないしって。

 

次の日

「お!綾野剛!!」

って言われたから

「またまた〜(キリッッ)」ってしておいた。

 

俺は綾野剛だ。